文系の自分が渾身の力でSTAP細胞の捏造について解説してみる。

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前回のブログで、STAP問題は何が本当の問題なのか自分の考えを書いてみたわけですが、それはそれとしまして。
みんなが最も関心を抱いている、
「STAP細胞は本当にあるのか」
「悪意があったのかなかったのか」
といった点について、ちょっと突っ込んで調べてみようと思いました。プレゼンがバタバタと終わったりして今週はヒマだったので。

具体的には、改ざん、捏造と言われる画像がいったい何を表してるのかを勉強したわけです。
これがわからないままでは、結局、正しい意見は持てないと思いますから。
自分、なにしろ法学部出身なのでどこまで科学的に説明できるか不安はありますが…。
非科学的に生きている方々がSTAP問題についてご自分の感想を抱かれる時の参考にしていただければ。

さて、まずは前提となる知識から。
人は元々受精卵という一個の細胞で、これが様々な細胞に分裂し、心臓の細胞になったり骨の細胞になったりして人の形を成します。で、いったん心臓の細胞になってしまったらそれが骨になったり血液になったりすることはありません。
この、まだ何にもなってない状態を「未分化」、何かの細胞になることを「分化」と言います。
未分化状態の細胞は、どんなものにでもなれる可能性があり、それゆえに「万能細胞」などと呼ばれたりします。
いま人類が手に入れた万能細胞は2種類あります。
「ES細胞」と「iPS細胞」です。
ES細胞は、ざっくり言うと受精卵をうまいこと取り出したもの。クローンなどに使えますが、医療に使うのは難しい。その主な理由は、他人の細胞を使うことになるので拒否反応が起きるから。
iPS細胞は、分化した細胞を人工的な技術で未分化状態に戻したものです。医療への貢献が期待されますが、がん化など暴走をどう制御するかなどの課題が残っています。

そこでSTAP細胞です。
これは僕も誤解していたことで、たぶん皆さんのほとんどもそうだと思うんですけど、酸などの刺激を加えるぐらいのことで分化した細胞を未分化に戻せるかも、という仮説は小保方さんのものではないんですね。そのアイデアは以前からあって、それを実証したと主張しているのが彼女、という状況です。
喩えるなら世界のどこかに未知の大陸があるのでは、という仮説がある中で、新大陸を実際に見て来たと言い張る人が現れた、ということでしょうか。
なので、彼女の成果を否定することは別にSTAP細胞を否定することにはならないのです。

では、改ざんされたと言われる下の図を見てください。
stap 1
これは電気泳動と言われる手法でいろんな細胞のDNAの長さを表したデータなんですね。一番左がES細胞。まん中がT細胞と言われる細胞。左からの三つは、比較のための参照として置かれています。右二つがT細胞を未分化に戻した(と主張されている)STAP細胞。
STAP細胞は受精卵などの未分化細胞じゃない、分化した細胞から作られないと意味がありません。そこで選ばれたのが免疫細胞の一種であるT細胞。これからSTAP細胞を生み出せれば分化した細胞から未分化に戻したことがハッキリするというわけです。
この図をよく見ると、まん中の画像の上の方、フォトショで黒く加工した後がある。
これを見つけた科学者たちは、「?」と首をかしげました。なぜなら、わざわざそういうことをする理由がわからないからです。
分化した細胞が未分化に戻っても、DNAは変化しません。むしろまん中の画像は右隣の画像と近くないとおかしいんです。
もしかすると小保方さんは、T細胞とSTAP細胞がこの図上でも違う見え方をしないといけないと考えたのかもしれません。
つまりこれは「やる意味のない改ざん」なんですね。改ざんが常套になっていて、うっかり余計なことをやっちゃったんでしょうか。
これを指摘されてから理研は「STAP幹細胞はT細胞から作れなかった」的なことを言って科学者たちをズッコケさせています。イミフすぐると。

次に、下の画像。

stap2

STAP細胞が万能細胞であることを証明するためには、これがちゃんと分化することも示さないといけません。「Nature」の論文ではそのために2つのことをしたとなっています。
1つは、マウスの皮下に細胞を注入して、それがある種の腫瘍化したことを確認したと。それがまん中の画像です。
もう1つは、細胞をマウスの受精卵に注入してキメラマウスというある種の奇形を作り出したと。これを引き受けたのが山梨大の若山教授です。

ところがこれらの画像が数年前の論文で使ったものの使い回しであることがわかり、「捏造」ではないかと(ところで僕の親しい研究者によればこの正式な読みは「ねつぞう」じゃなく「でつぞう」だそうです)大騒ぎになったわけですが、何がそんなに問題かというと、この腫瘍化画像は「ただのES細胞によるものじゃないのか?」という疑惑が生じるからです。

おそらくその疑惑を誰より強く抱いたのが、「論文取り下げ」を最初に求めた若山教授です。彼は実験用のマウスを小保方さんに送り、そのマウスから作られたSTAP細胞(?)で見事にキメラマウスを作り出したのですが、彼が受け取った細胞の遺伝子検査をしたところ、まったく別のマウスのものであることが判明。それはES細胞を取り出すための実験用マウスでした。
つまり、彼はSTAP細胞と言われながらES細胞を掴まされていた可能性があるわけですね。
記者会見でそこを突っ込まれると、小保方さんは「若山先生とは直接話してないので、さあ~」と、話をはぐらかしていました。

以上が「改ざん」と「捏造」の概要です。
ふい~。
「自分は新大陸に行った!」と主張し、その証拠として金銀の財宝や原住民を連れ帰った小保方さんですが、調べてみると財宝は金メッキ。原住民のDNA検査をしたらそのへんに住んでる黒人じゃねーかよ!というのが今の状況です。
航海日誌はつけてない、航海図は秘密、同行した者はいるが誰かは言えない、世界中の冒険家が試してもどこにも見つからないが、自分はもう200回も行ってます。新大陸はあります!と。
これをどう受け止めるかは皆さんのご自由ですが、僕は、もし新大陸があるとすれば、全く違う方角に船出した方が見つかるような気がします。