不倫報道の意味

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よ~やく年内の仕事も納まって、ちょっと時間も余ったので、今年言いそびれたことをいくつかまとめて書いてみようかと思いました。
その1は、「不倫報道の意味」についてです。

こないだワイドナショー観てたら、田村淳さんがこんなこと言ってたんです。
「近藤真彦さんの不倫はこのまま誰も報じなきゃいいのにと思ってた。それを前例として芸能人の不倫報道はもうしないってことにできたのに。不倫というのは家庭と周りのスタッフぐらいしか言えない話だと前から思ってた」。
他のコメンテーターも、ものすっごわかる!などと賛意を示してました。
僕はそれを観ながら、アチャー、芸能人の不倫について、当の芸能人の認識はこんなものかよと心底ガックリ来ました。
わかっとらんなと。
知性派(?)の田村さんですらこんなものかと。

確かに一般人の不倫ならその理屈は通るでしょう。
しかし、芸能人の不倫となるとそうはいきません。
芸能人の不倫は、実質的には巨額詐欺行為に近いものがあります。
なぜなら、彼らは不倫しない、していない、クリーンなイメージを守る、と「嘘をついて巨額のマネーを集めた」からです。
それに、不倫が発覚すると契約違反に伴う賠償責任が発生するわけですが、スポンサーや関係者のダメージはそんな賠償ではとても賄いきれるものではありません。
芸能人はそこについてあまりにも無関心過ぎると呆れました。

いま、企業にとってマーケティングは生き死にを決める重要な活動になっています。
仮に中堅どころの企業、あるいはベンチャー企業が乾坤一擲で10億ぐらいの予算を投じて広告展開を始めたとします。
芸能人を起用して、契約金と出演料に年間6千万円払ったと。
で、展開を始めた途端、彼の不倫が発覚。
急遽、別タレントでCMを撮り直すことになった。
その場合、どういう損害が生じるか?
まず時間的なことで言うと、別タレントを契約し直して、撮影してオンエアするまで、超人的に急いでも1ヶ月はかかります。
その間、TVCMは枠を押さえちゃってるんでキャンセルは不可、違う素材に差し替えないといけません。
別商品のCM素材があればそっちを流し、なければ「エ~シ~」。
ACのメディア費は全部スポンサー企業持ちです。
目立たないながら、TVよりもっと痛いのは店頭です。
商戦期を狙いすまして、消費財ならスーパーとかドラッグにタレント起用の売り場を展開していたのが、什器も立て看板もPOPも全部撤去。
これは流通に迷惑をかけたことにもなり、メーカーとしてはとってもつらい作業です。
1ヶ月後、タレント替えましたんで、といってまた売り場作ってくれるかというと、そんなわけにはいきません。
つまり、商品を売るタイミング、売る場所をほとんど失ってしまうことになるのです。
賠償金で6千万円返してもらったところで、事実上10億円丸損、もっと言うと、その新商品ローンチが躓いたことで開発から営業から何から企業活動が数10億円丸損、てことにもなりかねない。
よく「損害賠償金1億か?」などと報じられますけど、その不倫のおかげで周囲が被った被害はその十倍以上だったりします。
このような最悪のシナリオでないにしても、賠償額1億なら実際の損害は10億以上に見ていいんじゃないでしょうか。
もちろん広告だけではなく、映画やドラマ、舞台などにはまた金額には換えられない様々な悲劇があるでしょう。
それをね、「家庭と周りのスタッフぐらい」程度の認識でいーわけねーだろ!と言いたいわけ。

「自粛する意味あるの?」といった話もよく聞きますけど、あるわい!
あおり運転で捕まったら免許証を取れない欠格期間が最大10年。
これは、すぐ免許証渡すとまたすぐやるんじゃないか?ってことですよね。
それと同じで、自粛ってのは、反省してないとまた不倫繰り返して人様に迷惑かけるから、欠格期間を設けようってことですよ。
やらかしたことの大きさによってその期間が決まるのも当然かと。
ワイドナショーでかまいたち濱家さんは「どんだけ仕事なくなったかとか知らんがな」と言ってたけど、いや知っといてくれよ!

マッチの不倫がたいして報道されなかったことについて、Jへの忖度だとか、大物ほど騒がれないのかとか言うけど、そういうことじゃないと思いますよ。
僕が知らないだけかもしれないけど、マッチの不倫で損害を被ったという話はほとんど聞きません。
自動車事故に喩えれば、マッチの場合は通行人1人とぶつかって怪我を負わせました、ぐらいのもの。
渡部さんとかの場合は、歩道の通行人10人なぎ倒して、えっ運転中無修正ポルノ観てた!?みたいなものですよ。
報道に差が出るのは当然でしょう。
マッチだって、10社ぐらいとCM契約していて全部で100億ぐらいダメージ与えてしまった、てことだったら大々的に報道しないですんだわけはない。

「クリーンなイメージの芸能人は叩かれ、悪いイメージの芸能人は許されがちで、不公平だ」とも言うけど、それは当たり前!
繰り返すけど、偽りのクリーンイメージでマネーを集めていたのだから。
企業はそのイメージを借りようとして大きな契約金を払っているので、完全な逆効果になってしまい、こっちの方がスポンサーの打撃も巨大になります。
悪いイメージの芸能人はそもそも企業の顔として起用されにくいし、打撃は少ないです。

イメージで金を集めることのできない芸能人は一般人同様、家庭のこととして収めてよいでしょう。
でもイメージで金を集めた芸能人が不倫で周囲に巨大な損害を与えたら、芸能人がそんなことをしては許されないのだと、報道で徹底周知してもらう必要があります。
これが、芸能人の不倫報道の大きな意味です。
不倫リスクの不安を抱えながらもまだ企業がタレント契約をするのは(芸能人なんかとビジネスできるかという企業もあります)、それがギリギリの自浄効果を生み出しているからと言えるでしょう。

ただ、ここに一つ問題があるとすれば、「私刑」になる恐れです。
民事上、刑事上の禊はすんでいるならば、報道によってバッシングを繰り返すのは、法治国家として許される一線を越えないのか、という議論はあるでしょう。
もちろん、本人を痛めつける目的の報道、誹謗中傷の報道はなされるべきではありません。
しかし、嘘によって金を集め多大な損害を各所に与えた芸能人について、再発防止の観点から戒めの報道をすることは、業界の「慣習法」と考えてもよいのではと思います。

もし不倫報道がその意味を持たなくなるとしたら、それは、日本人が不倫を受容するようになった時でしょう。
「別にそんなん悪いことでもなんでもなくない?」と。
そのようになった時は、誰も損害を受けないのだから、不倫報道の意味はなくなると思います。