小霜とのお仕事を検討されている方へ

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おかげさまで、僕もけっこう業界内で名前が売れてきているようで、おそらくこれを書いている今もあちこちで仕事のパートナー候補として名前が挙がっていることと思います。
以前から長いお付き合いの方々は僕の人となりや仕事の進め方をよくご存じなので、単純にその案件にハマるハマらないで判断してくれます。
でも初めての方々は、僕という人間がよくわからないために躊躇されるケースが多いんじゃないでしょうか。
そのお気持ちはよくわかります。
僕も、仕事のパートナーとして、CM監督、アートディレクター、運用コンサル、といった人に声をかけるとき、初めての方だと直接の連絡はなかなか怖くてできません。
ちゃんと労力を割いてやってくれるだろうか、いろんな事情に耳を傾けてくれるだろうか、案件にフィットするだろうか、などなどの不安がよぎります。
結局、いつもの安心な人で…となることが多いのが実状です。

ただ、「マス✕Web」クリエイティブを全体で捉えるクリエイティブディレクターは現状ほとんどいらっしゃらないようで、そこで困った方々が意を決して連絡をくださる、ということが増えています。
「いつもの安心な人」が存在しないわけです。
そこで、僕がどのように仕事と向き合って、どのような考え方で取り組んでいるかを、そのような方々のご参考になるよう書いてみようと思いました。

まず、僕はクライアント・ファーストのスタイルを貫いています(至らないところもあるにせよそのつもりでいます)。
発注主の要求や事情にできる限り答えるために、こちらから合わせる、ということです。
「オレのやり方はこうなんで」と、押しつける自分ファーストは絶対にしません。
そして今後、クライアント・ファーストのためにはWebも知らなくてはいけません。
だから自分の仕事領域にWebを取り込みました。
デジタルクリエイティブの先駆者のような紹介をされることがありますが、マスからデジタルに舵を切った、ということでは全然ないのです。
Webだけで十分な案件ならWebだけ、マスだけで十分な案件ならマスだけ、両方を掛け合わせた方が効率的ならそういう提案をします。
ご依頼内容もものすごく幅広いです。
デジタルクリエイティブはもちろん、普通にTVCM企画、コピー、CI、コンサルティング、商品開発、人材開発、etc.
基本的には何でも屋です。

次に、「コントローラブル」であると思います。
僕からしても、あまりに監督などが「アンコントローラブル」だとやりにくい。
広告の業務っていろんな事情が絡まりながらカタチを作っていくものなので、たくさんの事情や要素をいったん腹に収めて、ガラガラポンでその制約の中でのベストを提示するのがCDの役割でもあります。
その進行の中で、事情を受け容れてくれない人がいるとそこでスタックしちゃうんですよね。
もし僕がそういう人なら、広告主やエージェンシーを困らせることになります。
僕は「作品」づくりということへの執着が全くありません。
成果主義なんです。
どれだけ表現物が褒められようと商品が売れなければ凹みます。
もしそれで賞を獲っても辞退するでしょう。
そして、「成果」の中にはいろんな事情や制約を乗り越えて、という部分も含まれると思っています。
発注主はそこがわかっていますから、よくぞこの複雑な事情を乗り越えてここまで持って行ってくれた、と喜んでくれます。
そういうふうに喜んでもらえたとき、僕は非常に達成感を覚えます。

次に、基本的に仕事は選びません。
大きな仕事はありがたいです。
特にTVCMのシリーズなどは売上げが安定しますから。
でも、仕事の喜びを与えてくれるのはやはり「人」なんですよね。
どこにどんな出会いが潜んでるかわからない。
なので、新規のご依頼は規模の大小に関わらず大歓迎です。
むしろ規模が小さい方が新しいことがしやすい、という個人的喜びはあります。
新しいこととは表現として新しいというだけではありません。
一例で言えば、こないだTV局の方から、Webで番宣をやりたいがどうしていいかわからない、というご相談を受けました。
まず僕は運用会社をご紹介し、どういう運用の仕方がいいかそこと打ち合わせしました。
その番組は旅ものバラエティで5人のタレントが中心になっていたので、ターゲティングとしては、各タレントのファン、旅もの番組好き、すでにその番組のファン、といったセグメントができるのではないかということになり、それぞれのターゲットに合わせて、番組の素材をWebCM用に編集し分けることにしました。
7ターゲット向けに短尺長尺2タイプで計14タイプ。
TV局の編集室に番組ディレクターと1日籠もって編集しました。
運用会社は運用しやすいと喜んでました。
おそらくこれを読んでいる皆さんはこういった仕事のやり方って聞いたことがないし、こういう仕事のやり方をするCDも知らないでしょう?
僕からするとこういうことが「新しい」と感じるんです。
撮影もしないような仕事はしたくないよ、などというのは古い考え方に感じます。
僕はWebCMにちゃんと予算かけましょうよと提唱してますが、それは、同じ撮影もの動画なのにTVCMには3千万、WebCMには3百万、というのはおかしいでしょうと言っているのであって、お金をかけずにすむのであればかけないに越したことはないのです。
TVCMほどの制作費をWebCMにかけよう、というカルチャーはまだ広告業界には育ってないです。
それも「事情」の一つですが、ならば、アリ素材を使ってうまくできないか、アフターエフェクトの簡易アニメと組み合わせるだけでも違うんじゃないか、といった試みをいろいろやっているところです。
そういったものがロールモデルになって、低予算WebCMの業界標準になれば、僕にとっては痛快なことです。
何となく僕の目指しているものがわかってもらえたでしょうか。

次に、座組みについては何でもアリです。
まず、多くの広告主が誤解されてるんですが、エージェンシーさんと僕は競合関係だから一緒にチームを組むのは難しいのではと。
そんなことはありません。
エージェンシーさんと僕は基本的には協業関係です。
エージェンシーからご依頼をいただくとき、最も多いケースは、すでにエージェンシー内にCD以下のクリエイティブスタッフがいて、彼らと一緒にやってほしいというものです。
スタッフの刺激や学びにもなるので、と。
CDが2人立つことになりますが、僕が実質上のECD(CDのさらに一つ上)的な立場でやらせてもらうことになります。
もちろん僕と並び立っての作業を嫌がる人もいるでしょうが、それは個人の問題です。
そういう協業をすることで人間関係でトラブルが生じて業務に支障をきたす、といった例は少なくともこの数年は一つもありません。
最近は広告主サイドのECDとして、エージェンシーさんを下に付けてもらう、といった座組みも増えて来ました。
これにはマス担当とWeb担当がバラバラで、エージェンシーが異なったり、エージェンシー内の意思疎通がちゃんとできていないという背景が大きいです。
広告主側にいる方が、一つにまとめやすいわけです。
また、プロダクションさんから声がかかることも増えました。
WebCMは、エージェンシーを介さずに広告主がプロダクションに直発注するケースが多いです。
しかし、プロダクションもただ下請的に作業するのでは広告主の要求に応えられなくなってきていて、CDとして見てくれないか、というご依頼です。
とにかく外部で自由にスタッフィングしてくれ、というケースもあります。
その場合は案件に応じて、適した人や組織に声をかけてベストと思えるスタッフィングをします。
座組みの考え方もクライアント・ファーストで、発注主の事情によってこちらの体勢を整えるということです。

次に、僕は権威で仕事しません。
権威という意味が、あるカテゴリーに精通したエキスパートということならいいのですが、ただ著名であるとか、ナントカの会員だとか、そういった曖昧な「偉さ」のようなものを後ろ盾に仕事するのは間違っていると思うのです。
打合せにおいては、正しい意見、あるいは面白いアイデアを出す者の勝ち。
それが誰であっても関係ないはずです。
同意できないけどあの人には逆らえないな、といった進行の仕方は間違っているということです。
僕は業界内での自分のポジションがよくわかっていません。
たぶん気にしていないからわからないのだと思います。
広告主のエライさんにも平気で反論しますが、それは今のポジションだからできるのではなくて、20代の頃も同じようにしてました。
正しい意見を言うべき、正しい提案をすべき、という、それだけなんです。
最近はどうも自分の意に反して大御所とか雲上人とか呼ばれることもあり、こんな仕事の相談したら怒られるんじゃないかと思ってました、とか、こんなことで時間取らせたら怒られるんじゃないかと思ってました、とか言われることあるんですが、怒るわけないし。
基本的に僕の内面は30代半ばでCDの仕事をし始めてからそんなに変わった気がしてません(その頃から僕を知っている人はいろいろ異論あるかもしれないけどそれは飲みながら伺うこととします)。

次に…何か聞きたいことありますか?
こないだ酒の席で聞かれたんですが、今後何をモチベーションにして働こうとしてるんですか、と。
「恩返し」みたいなことかもしれないなあ、と答えました。
広告業界のおかげで僕はずいぶんいい思いをさせてもらって来たと感じてます。
それなりに努力もしたし、運もあったでしょうが、やはり先達がきっちりクリエイティブのビジネスモデルを作ってくれていて、そこにうまく乗っかれたことが最も大きいと思っているんです。
そのモデルが崩れてきていて、業界人皆が苦労し始めている。
デジタルシフトって現状はすごく非効率ですからね。
ただ労力が倍になっただけで。
だから、こういうやり方をすればうまくいくんじゃない、とか、こういうふうに頭を切り替えれば楽になるんじゃない、とか、そういう提示をしていきたいなと。
広告クリエイターは、「あの仕事をやった人」として評価されるものです。
僕は、「業界のここを変えた人」として評価されたいと思うようになってきてます。
ちょっと格好付けすぎですかね。

僕の評判を聞くと、きっと二分されると思います。
「素晴らしい人だよ」
「イヤなヤツだよ」
と。
同じ絵画や風景でも観る人によって感じ方が異なるように、要は相性というものだと思います。
取って食いはしませんので、まずはこのサイトに載っているメアドから連絡いただければ幸いです。