ミドルファネルが業界を変える

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最近「フルファネル」という言葉をよく耳にしませんか。
「ファネル」が何ぞや、というのは(もし知らない方がいらしたら)各自調べていただくとして…。
僕の定義ではトップファネルが認知、ボトムファネルが刈り取り、それらを繋ぐミドルファネルが自分事化、となります。
たとえば認知とはTVCMで広く知ってもらうとかですね。
たとえば刈り取りとはリスティングや自社サイトを訪れた人へのリターゲティングバナーとかですね。
これらは、ずいぶん前から行われて来ました。
しかし、バラバラに行われて来たので、認知から刈り取りまで全体で一つのコミュニケーション設計を作ろうよ、という考え方を「フルファネル化」と言っているわけです。

実際、ミドルファネルをぶっ込むと、成果が格段に上がります。
昨年対比数倍といった数字が出たりします(僕の事例で「変わらず」などといったことはまだ一つもありません)。
ミドルファネルのキモは「細分化」にあります。
僕のやり方としては大きく2つに分かれてまして、ターゲットの細分化あるいは商品優位性の細分化です。
ターゲットの細分化とは、ターゲットを3~4種類ぐらいのクラスター(スモールマス)に分けることですが、その各クラスターが価値を感じるようにWEBCMなどのコンテンツを複数バリエーション制作し、当てていくわけです。
商品優位性の細分化とは、その商品やサービスの優位性を一つに決めるのではなく、多面的に捉えてコンテンツを複数バリエーション制作し、ターゲットに複数回当てていきます。
喩えは悪いですがいろんな餌で魚釣りをするわけです。
どっちにしても、メディアとしてはSNSが売上げや集客への寄与度が高い傾向です。

広告コンテンツ企画制作はTVCMなどのトップファネルをまず先にやって、さあWEBはどうするか、という流れが一般的でしょう。
僕は逆のやり方を取ります。
ミドルファネル先にありきで、そのコンテンツの中から最大のクラスターに当てられるもの、あるいは商品優位性を最大に伝えられるものを「代表」としてTVCMやTrueViewに持って来るのです。
ちなみにTrueViewはトップファネルに置いて認知メディアとして活用するやり方と、ミドルファネルに置いて自分事化メディアとして活用するやり方と、両方に使えますが、SNSに比べてViewは10倍以上出ますがエンゲージは低いのでトップファネル向きと考えます。
ミドルファネルはトップやボトムの役割を兼ねることもできます。
制作費的にも、全部まとめて作っちゃうことができますから、これまでのやり方より格段に低くなります。

「なるほど、じゃあすぐやってみよう!」と思っても、残念ながらそうはいきません。
フルファネル化は、コミュニケーション組織の一体化なくしてはできないことだからです。
先ほど、「これらは、ずいぶん前から行われて来ました。」と書きましたが、別組織で行われる場合がほとんどでしたし、今もそうです。
つまり認知はマーケティング部・宣伝部。
そこにつながっているのは総合系エージェンシー。
刈り取りはデジタルマーケティング部。
そこにつながっているのはデジタル系エージェンシー。
じゃあミドルファネルは誰がやるの…?
できる組織がないんです。
ミドルファネルのコンテンツ、たとえばWEBCMを企画制作する能力は宣伝部にありますが、運用する能力はデジタルマーケティング部にあります。
この2つの組織が両輪になっていなければフルファネルなんてできっこないんです。
よく業界系の記事で「デジタルマーケティング部がフルファネルを実現しました」というのを見かけますが、自己矛盾です。
「宣伝部とデジタルマーケティング部がフルファネルを実現しました」となっていなければ、それはフルファネルではありません。

ファネルというものを語るときには、必ず組織論がくっついてくるんです。
2つの組織がそれぞれで予算を持っているというのもコトをややこしくしています。

じゃあ、フルファネルは誰が音頭を取ってやっていくのか?
社長です。
あるいは、マーケティングを全権委任された専務、常務などの、いわゆるトップ。
僕はこういった方々から依頼を受け、広告主サイドのアドバイザーとして組織間、企業間の交通整理をする、そんな業務が増えました。
繰り返しますが、そうやって組織を整えてミドルファネルから作っていくと、格段に成果が上がるんです。
ただ、このようなトップはまだまだ少ない実感です。
幕末の開明派大名のような、マーケティング意識の高いトップが増えれば、次第に広告主の組織体制も変革され、ひいては広告業界全体の変革につながるように思えます。
どうやったら増えるかなあー、と考えているところです。