化ける人

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今日はPenの森本千絵特集号の発売日だ。僕はアマゾンで注文しているからまだ手に取っていないが、後輩がメジャーになっていくのは素直に嬉しい。それも、ただの運やコネやズルでなく、努力によるものであればなおさらだ。彼女と仕事した中で、ひとつ強烈に覚えているエピソードがある。僕がCDとして彼女にグラフィックをまかせたキリンの仕事なんだけど、そのプレゼン案を作るのに、彼女はデザイン事務所に泊まり込んだ。その泊まり方がとんでもない。当時彼女が乗っていた、ゴルフだったか何だかを事務所の真ん前の道ばたに停めておく。事務所でずーっと作業して、夜中にその車に行って仮眠を取り、朝また作業場に戻るのだ。それを、たしか3日ぐらいやってた。まさに僕は舌を巻いた。デザイン事務所も大変だ。拘束料だって払いきれないから、彼女は方々に「借り」を作っていたようだし、当時、「森本さんの仕事はちょっと…」と仕事を断るところもあった。そういうことを積み重ねて今の彼女がある。
僕は、「人は侮れない」と思っている。誰だって、どこかで化ける可能性を持っている。可士和君も、若い頃のデザインは「?」なものが多かったと記憶してる。でも、たぶんホンダの仕事あたりで化けた。僕の部下だった小西も当初は「あんなセンスないヤツいりません」と拒否ったぐらいだが、見事に化けた。
ただし、化ける人には共通点がある。それは、覇気を持っているということ。「アルゴリズム男子」で書いたような、ぼんやりと何かを待っている人は、化けることがない。身体の中に火薬を抱いていたとしても、温度が発火点まで行かないからいつまで経っても化学反応が起こらないのだ。ツイッターなどで、成功しているクリエイターの生の声を聞くことができるようになったけども、「なんだかみんなお気楽に成功してるんだなー」などと思ったら愚かだ。自分の抱える悩みや苦しみをそのままパブリックに丸出しするヤツなどいない。「こんなに努力してるのに何で自分は認められないのかなー」などと思ってる人は、その努力がほんとうに努力と呼べるレベルのものなのか、発火点までの熱さを持っているのか、自分を見直してみるのがいいと思う。