皆さんこれが社会の縮図です!

Share Button

うちの家族は、元旦は恒例として僕の両親の家で過ごすことにしています。
今年は、両親の家に入るとTVの前にコタツが置いてあって、その脇にひとつだけ椅子が用意されていました。畳に座れない僕のためにです。昨年の手術で僕の右股関節は人工骨頭になりまして、地べたに座るのがちょっと難儀です。座れないわけではないのですが、うまくやらないと関節が外れるかもしれないとリハビリの先生に軽く脅されているのです。

そこに座って2時間ほどすると、なんだか腰が痛くなってきました。
椅子をよく見ると見覚えがありました。前の事務所で打合せの補助椅子として買った安物で、引っ越しの時に捨てるのがもったいないと両親が持って帰ったものでした。クッションはなく、がちがちに硬くて人間工学の片鱗もないものです。
そして、寒い。
「腰が痛いし、寒いよ。そろそろ帰らないか」
と僕が言うと、一同、
「えっ、何で?」。
コタツでぬくぬく寝っ転がって、スマホやゲーム機のボタンを左右の指でペコペコ押しながら、長女と息子は
「そんなに寒いかなあ?」。

ああこういうことなのだ。
まさにこれが社会の縮図ではないか。

東京はバリアーの街です。
自分が「あっち側」の人になって、初めてわかりました。
街に出ると、どの店にもどのビルにも、入り口に無意味な段差があります。杖で歩く身からすると、この一段、二段の段差がとても恐ろしい。つまずくとエラいことになります。車椅子の人はたかが一段のために入ることすらできない。でもきっと、皆さんは不思議な顔で、
「そんなにバリアーかなあ?」
と言うのですよ。

自分の家族ですら、相手の立場で見るということができないんです。
他人ならなおさら困難なことです。
街中で杖を使っている人や車椅子の人をあまり見かけないのは、街中に出ることが難しいからです。あらゆる店やビルに、
「おまえたちは来るな」
というサインが張り巡らされているようなものだからです。
そこに悪意があるとは思えません。
去年までの自分も含め、皆さんは障害者を街から無邪気に追い出しているんです。

(ちなみに2日は妻の実家に行きました。
そこでは椅子のままで入れるコタツが用意されていました。そもそもは僕のためではなく足腰が弱くなった義母のためでした。
僕はそこで昼から夕方まで酒を飲んでゆっくり楽しませていただきました。)