僕のカラオケレパートリーはけっこう狭い。FMとかCMソングとかでふと耳に入って「キタ!」と身体がビビッと反応したものだけ覚える。かなりの選択と集中をする。そしてこないだひさびさに「キタ!」曲があった。B’zの「Go for it baby」。Joan Jettの「I love rock’n’roll」にかなり似ている。下地にしたかもしれない。こういう、刻むようなエレキが僕は大好きだ。PEPSI(サントリー)のCM曲なのでキリンの人たちの前じゃ歌えないかも。しかしそんなのはたいした問題じゃない。これはもう最速で自分のレパートリーに加えないといかん。
そう思い立ったのが発売の数日前。僕はまず、ダウンロード配信で買おうと思った。ダウンロードすれば、そのままiPhoneに保存して仕事の合間に聴くことができる。しかし、B’zの新曲を扱っている配信サイトはなかった。それで次に、ツタヤDiscasでレンタルしようと思った。CDを買ってもいいんだけど、結局PCやiPhoneあるいはカーステに保存して聴くことになるわけで、板を持っていることに意味を感じない。コレクターでもないし。ところが不思議なことに、新譜情報に登録されてなくて予約できなかった。発売前だから?それで僕はやむなくYouTubeでPVを探すことにした。PVはあっという間に見つかった。それをダウンロードし、数回視聴して僕はだいたいマスターすることができた。
そしてCDを手に入れる必要はなくなってしまった…。
悩む。自分がやったことは窃盗みたいなものか?たぶんもう聴くこともないCDを今から律儀に買うべきなんだろうか?音楽業界の人は「買え」って言うだろうな、もちろん。今年の10月から著作物をダウンロードすると罰則が適用されるようになるらしい。訴えられたら僕は罰金を払わないといけないってことか。でも、何のために?それで音楽が売れるようになるんだろうか。なんだか腑に落ちない。どこにも駐車場がないから仕方なく路駐したらキップ切られるあの理不尽な感覚。金をけちりたいわけじゃない。ドネーションとして払ったってかまわない。なぜ罰則よりも先に、お金を払う場所をきちんと整備してくれないのかが、わからんのだ。
以前、博報堂の社長だった東海林さんが名言を残された。「泣く子と時代には勝てない」と。音楽業界はCDが売れないと嘆いているようだが、僕はCDプレイヤーなどとっくに持っていない。周囲でCDプレイヤーで音楽を聴いている人などいない。CDプレイヤーがないのにCDが売れないのは当たり前だ。そういう人たちにCD買わないと罰金だ、というのは無理があり過ぎるんじゃないか。それが業界の前進につながるんだろうか?
時代とは「逆らう」ものじゃなく「乗る」ものだろう。「乗る」とはその時代の人の生活を見て、そこに伴走すること。皆が勝手にダウンロードして音楽を聴いたり映像を見たりしているなら、まずはそこを認めないといけない。認めた上でどうマネタイズするかを考えないと、どんどん無理が出てくると思う。iTunes storeやAmazonやhuluなど、時代を作ったり乗ったりしているサービスにはひとつ共通点がある。それは「ラク」ってこと。人はラクや楽しいことをしたい。iTunesはダウンロード購入がラク過ぎる。価格設定も含めて、このお気軽感はすごい。Amazonは国税局と争っても法人税を日本に払おうとしないし日本人の僕としては国内の本屋から買いたいんだけども、午前中に注文したらその日のうちに届くというシステムがあまりにもラクで楽しすぎて、毎日のように利用してしまう。罰則を設けるというのはぜんぜん楽しくない。発想が真逆だ。もはやこれまでのビジネスモデルは崩れた。そこにこだわっても誰も楽しくなれない。楽しくないものはそのうち滅びるしかない。日本の著作権業界に、そこんとこ理解して、もう一回がんばってほしいと切に願う。
Go for it baby コエテユケ 甘い思い出を 本当の最高はこれから始まる Ah ah ah ah~。
ちなみにこの曲、キーが難しい。どのキーで歌えばいいのかいまいちよくわからない。上手に聴かせるのは大変だ。
Go for it baby 著作権業界
2012年4月15日