「あまちゃん」が今日、最終回を迎えた。
僕は全てを追いかけていたわけではなく、時々観る、ぐらいのことしかしていなかったが、このドラマはとにかくキャスティングが素晴らしかった。
前面に立つ能年玲奈と橋本愛ももちろんだが、とにかくそれを支えていた小泉今日子さんと薬師丸ひろ子さんの力が大きかった。
僕が博報堂に入社して新人研修を経て、書いた希望配属部署は「ライオン担当営業」だった。当時僕は河井奈保子さんの大ファンで、彼女がライオンのCMに出ているという理由だけでそのような希望を出したのだった。
ところが配属先はコピーライターで、メインクライアントは資生堂。そのことについて会社に文句を言ったこともあったが、その話はまた別の機会に譲る。
当時資生堂担当をしていると、とにかくいろんな女優さんの撮影に立ち会うことになった。
その中で今でもくっきりと記憶に残っているのが小泉今日子さんと薬師丸ひろ子さんである。
小泉さんの撮影の合間、僕は人から頼まれていたサインをもらおうと、彼女に声をかけた。
「すいません、サインもらっていいでしょうか」と言って色紙を渡した。本来ならそういうことはマネージャーを通さないといけないが、当時の僕は怖さを知らない新人だった。
「いいですよ、サインペンもらえますか」と言われて、あっ、と固まった。
「すいません、サインペン…忘れました」。
彼女はそのままどこかに立ち去ってしまった。そして、数分後、サインペンを手にして「1階の守衛さんからもらって来ましたー!」と言ったのだった。シャンプーの撮影だったから、ガウン姿のままで編集スタジオの廊下と階段を探し歩いてくれたのだろう。
そういう人だ。
彼女に、ファンにならない人がいるわけない。
薬師丸さんはラジオCMのナレーション録りに立ち会った。僕はそれまで彼女のことは女優として好きでも何でもなかったし、特に映画も観たことがなかったのだが、彼女の第一声でころりとやられてしまった。普通のやり取り、「ああわかりました、ここはこう読むんですね」「あ、ボールペン落としちゃいました」「すいませーん、間違えましたー!」といった声が、心にきゅんきゅん響くのである。スターというのはこういうものか。いわゆるスター、カリスマ、というものに会った気がした。それからすっかりファンなのである。
あれから20年以上経って、彼女たちは未来ある女優さんたちを支えるポジションとなって、立派にそれを果たしている。
「あまちゃん」は若い人たちのためのドラマであったと思う。
ラスト、能年玲奈と橋本愛が走るシーンは、日本の未来ある人たちへの応援シーンと受け止めた。そしてそれを支える素晴らしい人たち。
業界は違うけども、かく言う僕も、もはや「おれがおれが」ではなかろう。未来ある人たちを支える役割をやらないといけない、そう思う。無料学校なんかもやったりしてるけども、まだ足りないかもしれない。少子化もあって、震災もあって、原発問題もあって、国に借金もあって、テロの恐怖もあって、なかなか難しい未来ではあるけども、未来は未来だ。
走れ若者。
おじさんは、できる限りの支えはしてあげるつもりでいる。