ベビーブームが来る!

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六本木の芋洗坂に時々利用するカラオケバーがある。博多弁のママと数人の女の子がいて、カウンター越しに相手してくれるのだが、全員非常に歌が上手でなかなか聴かせる。歌のうまさが採用基準だと聞いたが納得。男二人とか三人とかで歌うときはボックスも侘びしいので何かと重宝してたのだが、今年いっぱいで店を閉めるという。客もそこそこ入っているし、どうしたことかと理由を聞いたら「ママの子作りのため」だと。今年で37歳、そろそろ子供つくらないと…と焦っていたら20歳の頃つきあっていた元カレから再プロポーズされたのでそれを受け、結婚して子作り子育てに専念しようと決めたそうだ。そう言えば僕のマネージャーも確か37歳だっけ。時々、そろそろ子供が…とか、そろそろ再婚を…とか口走る。
今から20年ぐらい前、バブルの頃、銀座のクラブによく行った。クラブというのは摩訶不思議なシステムで、初めて行くと「担当」の女の子が決まるのだけど、これは客が自分のお気に入りを指名できるわけじゃなく、連れてきた客の担当が自動的になるなど、店側から勝手に決められてしまう。 だから、毎回、何の興味もない「担当」と飲まないといけない。自分のお気に入りの子はその担当を通じて指名するわけだ。僕の担当で29歳の子がいて、彼女はかなり焦ってた。このまま水商売に邁進するか?それとも誰かと結婚?子供産むならそろそろじゃない?などなどと。精神的にも少し不安定だったな。悪いお客はそういう心の隙を逃さない。彼女はこれと見定めた男にヤリ逃げされて、夜中、僕が寝てるときにわんわん泣いて電話かけてきた。二丁目に出かけてなぐさめてやったら、カラッと立ち直ってさっさと帰って行った。ホントに迷惑なヤツだった。いちおう言っとくと僕はその子となーんの関係もない。
思い出してみると、その子に限らず、当時は、女性が焦り始める時期は30前だった。それが、今は40前になっている。この20年間で、10歳ズレたのだ。その理由は、女性の社会進出が本格化したことと、やはり不妊治療の技術向上が大きいだろう。いまや40代で初産の人も珍しくないからね。そう考えていくと、ある予測ができる。それは、これからベビーブームがやって来る!ということ。
ここで、日本の人口動態グラフを見てみよう。下の表は2010年度の国勢調査からコピーしたものだ。
jinko
今の日本は、60代前半の年齢層が一番多い。グラフ上で「ポコッ」と突き出ている、上の方だ。この世代は人口も多いし金も持っている。いま健康食品などダイレクト通販会社の勢いがすごいのはここを主ターゲットにしているからだ。その人たちの子供が30代後半。「ポコッ」と突き出ている、下の方。そして、そこから下は、なだらかに人口が減っている。なだらかに…いや、ちょっと待て、「なだらか」って奇妙じゃないか?なぜかって、30代後半の人々が、他の世代の人たちと同じように子供を作っているならば、それがグラフに反映されてないといけない。10歳あたりから0歳にかけて、少しは「ポコッ」とした部分がないとおかしいわけだ。ということは、このグラフは二つの可能性を示している。一つは、30代後半の人たちは、「何らかの理由があって他の世代よりも子供を作ることを嫌がっている」ということ。もう一つは、「これから子作りしようとしている」ということだ。どちらが自然かというと、もちろん後者ということになる。
おそらく来年あたりから数年かけて、日本の人口動態は少し「ポコッ」としてくるはずだ。そうすると、次に何が起きるか?プチバブルだろう。以前のバブルは、今の60代前半の人たちが子供のためにマイホームを買い始めたことで発生した。それが一巡し、総量規制が終了のゴングとなった。30代後半の人たちに子供ができ、大きくなってマイホームや広めのマンションを買い始めると、日本は前回の規模とはいかないまでも、少しバブルになると思う。たぶん10年以内に景気が上がってくるんじゃないかな。
それはさておき、今、日本には子供を産みたくて仕方のない女性があふれている(僕の周囲だけで2人も!)。そういう女性たちを後押しするための環境整備が今こそ必要だ。民主党の子育て支援はなんだか尻すぼみになっているが、子育てのためにできることはいくつもある。保育園の待機児童問題もそうだし、医療費も地域によって不均衡だ。広告にだってできることはある。これまで、女性が家事や子育てに従事する姿を描くことに、企業は尻込みする傾向があった。フェミニズム団体が差別だとクレームを入れるからだ。でも、もういいんじゃないの?女性は立派に社会進出を果たしたし、僕もいつだって優秀な女性スタッフに頼っている。少し舵を戻して、子育てとか家事とか結婚とかの楽しさを表現するようにしていってもいいんじゃなかろうか。東海地方に「出雲殿」という結構式場チェーンがある。その新しい企業スローガンとして僕が書いたのは「結婚っていいものですよ。」だ。クライアントも僕と同じ思いを持っていてくださった。そのスローガンを見て「そうかもしれないなあ」と思う人が一人でも増えてほしいものだ。