皆さま、明けまして。
(昨年父が他界したものでこれ以上は口に出せませんが・・・)
本年もよろしくお願いいたします!
旧年は自分にとってまた一段ステージを登る年となりました。
これもひとえに皆さまのご支援によるものと感謝しております。
最近、自分の使命は広告業界をもっとより良い世界とすることではないか(シリコンバレーあたりでよく使われそうな言い方ですが…)と感じるようになり、そのような期待を向けられることも多くなってきました。
そのために、今年はこれまでに増して様々な抱負(あるいは野心)を持つこととしました。
まずは、「マス・Web統合」も超えた「広告・販促統合」へのクリエイティブ・ディレクター活動領域拡大です。
クリエイティブのマス・Web統合を自著で提唱したのは1年半ほど前。
これは今や当たり前で、言うまでもないものとなって来たように思います。
ただクリエイティブを統合しても、マス・Webの垣根を越えたアロケーション(=予算配分)をどうするかという課題がくっついて来ることに気づきました。
コミュニケーションの「最適化」とは、コンテンツの最適化を縦軸、予算配分の最適化を横軸とすると、その面積をどれだけ拡げるかということです。
どちらかだけでも成り立たない、両輪のようなものです。
今後、TVのWeb同時配信が始まることとなるでしょう。
そうするとTVとWebの一体化が本格的に始まることとなり、データの相互活用もできるようになっていくと思われます。
ただ、そこに至る道は険しいものがあります。
クリアすべき権利関係が山積みであるのと、ワンセグでの視聴がションボリな体験もあり、民放は腰が引けているからです。
なので、まだしばらくはオン・オフをまたいで分析するメソッドに頼る必要があります。
この課題を克服するために僕は昨年ハートラス社と業務提携し、予算配分最適化メソッドの開発・普及促進を始めました。
Fig.A(Figures for Allocation フィーガー)という名前です(仮 公表前)。
ネーミングが表すとおり、広告主さまからいただく数字データだけで各コミュニケーション施策が何にどれだけ寄与したかを分析、今後の最適配分案を提示します。
現状、再現性は約8割。
「再現性」とは、簡単に言えばTVCMのGRPを1上げると商品が10個売れる、というシミュレーション結果が出たとして、実際にやってみると8個~12個の幅で変動するという意味です。
これは他の類似ツールと比して劣るものではなく、また、回を重ねると約9割まで上がっていきます。
統計学で用いられる重回帰分析という手法があり、やや難しく言うと1つの目的変数を複数の説明変数で予測しようというものです。
ビジネス分野では営業予測や店舗の売上げ予測に使われることがありましたが、変数は品数や値引率、店の面積など。
Fig.Aはこれをコミュニケーション施策の様々な変数に応用できないかと考えたメソッドです。
ツール導入の必要がないので、初期投資にお金がかからず、驚くほど廉価でサービス提供ができます。
また、ツールを使うための人的リソースを割いていただくこともありません。
さらにはスピーディで、2週間以内に分析・提案が可能。
その日の天候など施策外で影響を与えそうなものを変数に組み込むこともできます。
バナーを増やすとコンバージョンが増えるね、といった表層的な分析に留まらず、どの施策がどの施策に影響を与えているのかというアトリビューション(貢献度)も可視化できます。
この技術を持っているのは僕の知る限りでは我々だけで、紹介させていただいた自分のクライアントさまからはとても好評です。
近年マーケティング部署から経営層へのアカウンタビリティ(説明責任)が大きな課題として浮上しています。
つまりコンテンツ制作費、メディア費含め、コミュニケーション投資の対効果がブラックボックス化しているのをなんとかせよと。
「そこはどうしようもないよね」「そのうち誰かがやるよね」と放っておける性分ではないので、自分がその課題解決をしようと意を決した次第です。
また、これまで僕が悩んでいたのは、KPIの設定でした。
たとえばWebCMを流したとします。
動画は静止画よりもクリック率が劣りますから、そこでのコンバージョンはさほど期待しません。
リターゲティングバナーにつなげるためのデータ取得を主目的とします。
しかし、このWebCMの何をもって「うまくいった」と言えるのか?
KPIを完全視聴率と設定したとしても、それが高ければCMとして出来のいいクリエイティブと考えられるのか?
Googleはアルゴリズムを変えて「完全視聴しやすい人」に露出させるようになり、TrueViewの平均完全視聴率は数年前の倍ぐらいになっています。
それは広告が届いたと考えていいのだろうか?
しかし、このWebCMのこのバージョンをこれだけ露出すればこういう効果に繋がる、といったことが可視化できれば、それこそがクリエイティブの評価になるし、メディア運用においてKPIという考え方すら必要なくなるかもしれません。
そして、さらに重要なこと。
Fig.Aはマス・Webにとどまらず、チラシであったり営業マンの数であったり、販促施策や営業施策まで対象とすることができます。
たとえば僕のあるクライアントさんは集客を折り込みチラシに頼っていましたが、このメソッドによって初めてTVCM・Web・チラシ全体の最適アロケーションをすることができました。
また、ある家電メーカーでは売上げ向上のために「広告予算を減らして量販店の派遣店員を増やすべきではないか?」といった議論がなされています。
こうなると、「マス・Web」の領域すら閉じこもった感があります。
デジタル時代に入り、クリエイティブディレクターはコンテンツ発でなく、メディア設計発でコンテンツを企画することが求められていますが、自分はさらに、これを販促領域まで拡げる必要があると考えています。
それによって販促・営業まで含むコミュニケーション投資をさらに柔軟なものとし、ROIをトータルで高めることができます。
自分で提唱しておきながらですが、「マス・Web統合」という課題ですら今や周回遅れの感を抱きます。
繰り返しになりますがマス・Web統合などは当たり前、販促から営業活動まで全てを俯瞰視して、どこにどういうコンテンツを配置してどういうアプローチをするのか、そこまで役割を拡張することで広告クリエイティブディレクターは来たるべき時代に機能すると考えています。