あなたは小保方さんにお金を預けますか。

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今日、小保方さんが記者会見を開きましたね。
どうなんでしょう。今後、彼女は世の同情票を集めることになるのでしょうか。

テレビでSTAP細胞の話題になると、コメンテーターの誰かが決まって
「結局、STAP細胞があるかどうかでしょう」
「可能性を潰すのはもったいない」
「小保方さんだけを悪者にしてはいけない」
などと言います。
報道ステーションの古館氏も「STAPがあるかどうかだけをみんな知りたい」と。
ネットの書き込みを見ても、似た感想を持たれる方が多いようです。

が、ハッキリ言わせていただければ、そういった視点は間違っていると思います。
ズレズレです。
STAP問題について一般の人たちは小保方さんを擁護、あるいは同情しがちのようですが、僕の親しい研究者たちは皆さん激おこぷんぷん丸です。
これはきっと、「お金」について無頓着でいられるか否かの差でしょう。

いわゆる「研究費」というものの多くは、国からの補助で賄われています。
調べると、理研へは運営交付金という名目で580億円が国庫から支払われており、STAP細胞の発表によってさらに1000億円の補助金が交付されることになっていましたが、これは取り消されました。
当然ながらこれらの基は税金であり、僕らのお金です。

研究費とはある種の投資であると思います。
喩えるならば、日本国民が投資家、政府が証券エージェント、理研や各組織の研究室が投資を求めるベンチャーのようなもの。
僕らのお金を預かる政府は、「この研究に投資すれば必ずや将来大きなリターンをもたらしてくれる」という案件に補助金を与えるわけです。
そして、その判断の材料が「論文」です。

その論文のデータがいい加減な内容だったらどうなるでしょうか。
「我が社は水をそのままエネルギーに変えるSTAP発電を開発しました!」という報告書があって、証券エージェントが「小霜さん、このファンドに投資しない手はないですよ!」という話になった。
ところがその報告書を吟味すると、そもそものデータが虚偽であった。水がエネルギーに変わった瞬間を見たと言い張っているのは、そこの社員一人だけと。
一般の投資の世界なら、これは詐欺を疑われます。
「いやでも、もし本当だったらもったいない」などと、そこに自分のお金を預けますか。

企業の経営者が虚偽の決算報告で株価を吊り上げたら、それは違法です。
「悪意はなかった、ミスして3年前のデータを貼り付けただけ」と言ったって、ヘタすると刑務所ですよ。
なぜ罪なのか。
それは、投資家に損害を与え、結果的に優良で将来ある案件に適切に資金が届くことを妨げるからです。

日本には、STAP細胞以外にも投資すべき価値ある研究がたくさんあると思うんです。
詐話的なトンデモ研究ばかりが注目を集めるようになったり、あるいは、研究者というもの自体が不信の対象になったりして、まじめに正直にデータを取りながら価値ある研究をしているところにお金が届かなくなる。
STAP問題で日本の研究界が危機的状況に晒されているというのは、そういうことでしょう。

今日の記者会見を見て、僕は、彼女は科学者として不適格の印象を受けました。
悪意があったかどうかなど、どうでもいい話です。
これから1年かけて検証していく丹羽さんという方は理研のエースだそうですが、彼が1年間を無駄にすることで、僕らはもっと大きな果実を失うことになるかもしれません。
彼女は「STAP細胞はある」と言い張っていましたが、それはすなわち「今後もSTAP細胞にお金と時間を投資し続けてくれ」という主張と同義です。
いやしくも研究者の端くれであるならば、「ある」と確信するに足るファクトを示すのが先、保身は後でしょう。