投票すべき政党

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衆議院が解散となり、選挙戦が始まる。僕が投票する政党は、少子化対策をきちんと打ち出している党、その一択だ。
これまで消費税だとかTPPだとか道州制だとか、いろんなものが政治案件として浮上してきたけども、なぜどの党も少子化対策をメインに打ち出さないのかさっぱり理解できない。日本の国力はこれからどんどん落ちていって国際競争力も失われていくという、暗い予想がなされている。日本は現在の東南アジア並の貧乏国になるだろうと。その理由はただ一つと言っても良い。急激な少子化。つまり扶養層の激減と、被扶養層の激増だ。これに抜本的な手を打たない限り、何をやろうとがん患者に絆創膏を貼るような紛らしでしかないだろう。
昔から「働き手」は2つの層を養わないといけない。親と子だ。このサイクルが続く限りその社会は持続できる。が、日本の場合、これからの労働層は親と子に「他人の親」まで加えた3つの層を扶養しないといけなくなる。もしかすると「さらに他人の親」で4つの層。それで社会が成り立つ道理がない。
いま最も人口ボリュームが大きい層は60代前半の「団塊の世代」だが、諸先輩方はきっちりと子供を産み育てた。現在アラフォーの「団塊ジュニア」だ。団塊の世代が子育てのために一軒家やマンションを購入しようとして不動産が高騰し、バブルを生み出した。彼らの不動産購入が一巡するとバブルが弾けた。結果的には彼らの動きで日本経済は振り回されたことになるが、異常なことをやって来たわけじゃない。異常なのはむしろ彼らの子供たち「団塊ジュニア」とそれより若い人たちと言えるかもしれない。衆知の通りこれらの世代は子供を産まない人が多い。だから不動産も回らないし、景気が上がらない。彼らは自分たちを被害者世代と感じているようだが、現在の不景気の原因は彼ら自身にもあるのだ。また、彼らは親という1つの層しか扶養しないことになる。やがて年老いれば他人の子供に扶養されることになるわけだが、それでは社会は回っていかない。畑に種を捲くことをしないで、他人の収穫で食わせてもらうようなものだ。自覚はないかもしれないが、やっていることは結果的にズルになっている。
もちろん、子供を産まない人たちにも事情や主張はあると思う。不妊に悩まされている人は仕方がない。そういう人たちが蔑視されるようなことがあってはならない。僕は苦しい不妊治療を乗り越えて子供を授かったご夫婦を何組も知っているが、頭が下がる。政治家がまず考えるべきことは、そういう人たちに援助金を出すってことじゃないだろうか。また女性の、キャリアとの両立問題もある。キャリアと子育ては今も「and」ではなく「or」関係と感じている人が多い。しかし先進国で「or」になっているのは日本だけだ。日本では女性の労働層は30を過ぎるとがくっと減る。海外でそんな現象はない。これは日本では出産と同時に仕事を辞める人が多く、海外ではそのまま働き続ける人が多いことを意味している。職場の制度が追いついていないからだろうが、金を出すとか休暇を与えるとかじゃなく、日本も経営者、そして働き手の発想を思いっきり「and」に変えるべきだろう。僕は自分のマネージャー(30代半ば・女)に、子供ができたら会社にベビーベッド置いてやると言っている。働きながら子育てすればいいじゃないかと。赤ちゃんをおんぶしながら打合せに出ていて、何がいけない?もともと女性は赤ちゃんをおんぶしながら田植えをしていたのだ。子供ができたら育児に専念して家庭に引きこもる、なんてのが一般的になったのは歴史を見ても昭和の一時代ぐらいだろう。会社を田んぼか畑のようなものと考えれば、赤ちゃんをおぶって出勤する方が自然じゃないだろうか。そんなふうに現場レベルでできることはいくつもあるが、政治でもそこはちゃんと手当てすべきだろう。
子供を産まない人が増えた原因には、社会的ムードの影響も大きいと思う。僕はずっと前から言ってるんだけど、なぜアルコールのCMに子供が出てはいけないのか。会社から疲れて帰ってきて、ビールを一杯飲む。目の前に妻子がいて、生まれたばかりの子の笑顔を見ながら明日もがんばるか、とやる気を出す。CMでそんな幸せな家庭を描くことは不可能なのだ。キリンやアサヒ、サントリー、サッポロは莫大な量のCMを露出しているわけだけど、登場人物は全て子供のいない大人。ビールの主飲料層は40代だから、30代とか40代にもなって子供も作らず友達同士で飲んでますよー楽しきゃいいんですよーといったシーンばかりが溢れることになっている。不自然すぎないだろうか。これは別にそういう法律があるわけではなく、酒造会社間の自主的な取り決めだから、社長が集まって話せば1分で解決されるぐらいのことだ。つまり、少子化問題、人口動態がどれだけ重要か、という認識が足りないのだ。子供がまねして飲んだらどうする、という少しばかりのクレームのために日本を誤らせていると言ったら言い過ぎだろうか。次の総理になった人は、酒造会社の社長たちに電話してくれないかな。いやマジで。予算のいらない少子化対策ですよ。SNSなどネットの普及も大きく影響していると思う。そもそも人は、楽しいことは胸にしまっておくものだ。幸せな家庭のことを口にすると「ノロケ」と揶揄される。だからネットでは不幸話や不満、クレームばかりとなる(このブログを書く時も若い社員や生徒に腹が立ったりなどネガな動機が多い)。だから配偶者や子供への感謝よりも愚痴の方が圧倒的に流通しやすい。マンツーマンのコミュニケーションでは、そういった会話は「謙遜だろうな」とさっぴいて受け止めたりするが、顔の見えないネットでは文字通り受け止めてしまう。かくして子育てに対してネガな情報ばかりが蔓延することになる。それへの対抗としては、子育て層があえて「ノロケる」という姿勢も大事なんじゃなかろうか。そして、それを「リア充」などと揶揄してはイカンのだ。
世界に目をやると、今後、中国の成長はどこかのタイミングから急に失速していくと予想されている。それは一人っ子政策の影響で、働き手の数と被扶養層の比 率が極端なアンバランスに陥るからだ。中国もそれがわかっているから、いま必死にヘゲモニーを確立しようとしているのかもしれない。
米国は西欧や日本と違って、少子化は緩やかに進むと言われている。若年労働人口を支えているのはヒスパニックだ。今後米国は老いたアングロサクソンと若い黒人ヒス パニック層の分断が進んでいくだろう。そして米国はアングロサクソンの国ではなくなっていく。その象徴的な出来事が先日の大統領選挙だったと僕は見てい る。
子育てに立ちはだかる最も大きな障壁は、何と言っても経済的な問題と社会構造だろう。金がないから育てられない。それもまた返しようのない話だ(僕は一人っ子だけど、その理由は二人 以上を育てる金がなかったからだ、と親から言われたことがある。言葉の返しようがなく、ただ悲しさを覚えるだけだった)。確かに子育ては金がかかる。特に 教育費。うちの長男がいま中学受験で塾に通っているが、こないだは特訓期間だとかいうことで、30万の請求が来ていた。年じゃなく、月。塾だけで年間数百 万。クレイジー!最近は塾の費用を用途にした銀行ローンもあるらしい。幼稚園と保育園の問題も解決されていない。働きながら育てようにも預ける場所がない (だから僕は子供を会社に連れて行けばいいと思っている)。そんなこんなアゲインストな状況の中で、いま子供を産もうと決意するには胆力が必要だろう。だからこそ、ここを今すぐ政治がやらないとい けない。子供を産んでも大丈夫!というメッセージを発信しないといけない。僕は前回の選挙では民主党に票を投じた。それは「子育て支援」に期待したからだ。しかしその期待はすぐに失望に変じた。そういった支援は10年、あるいは20年、確実に続くという保証がなければ意味がない。政局の動きや経済動向でやったりやらなかったり、額が変わるようでは形を変えたバラマキに過ぎない。政治家はなぜそんなこともわからないのか。頭が悪いのか。何か思惑が他にあるのか。消費税を上げようと、富裕層に課税しようと、将来的には無意味なことだ。これ以上法人税、所得税を上げようとするなら僕としては海外脱出も検討せざるを得ない。昨年から英会話の家庭教師を雇った理由の一つはそれを見越してのことだ。愚かな政府の元では暮らせない。
永井豪が1970年代に描いた短編集の中に「赤いチャンチャンコ」という一篇がある。社会が老人を扶養できなくなって、誰でも60歳になると赤いチャン チャンコを着せて祝ってもらい、そのまま殺されてしまうという話。まるで未来の日本を予見したかのようだ。昔貧しい地方では姥捨て山という慣習もあった。 このまま進んでいくと社会保障費打ち切り、など、新しい形の姥捨て山が復活するかもしれない。
日本で2番目に大きい人工ボリュームの「団塊ジュニア」層は、生理学的にそろそろ子供を産める限界に差しかかっている。いま彼らが子供を産まなければ日本は終わってしまう。いましかチャンスはないのだ。