「土用丑の日」というマーケティング

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鰻の旬は冬である。
冬眠に備えて秋から冬にかけて栄養を蓄えるから、鰻はその頃がうまく、夏はやせてしまって味も落ちる。
だから江戸時代まで、鰻は冬の食材であった。
その習慣を変えてしまったのが平賀源内だ。
あまりにも夏場に売れなくて困っているという鰻屋の悩みを聞いて、「夏こそ鰻」キャンペーンを展開した。
そのやり方は、マーケティングの基本に忠実だ。
USPとターゲットインサイトを結びつけた。
鰻のUSPは「栄養に富んでいる」。
ターゲットインサイトは、「夏バテしないものを食べたい」。
当時、「夏は『う』のつくものを食べるのが良い」という言い伝えがあり、夏場は梅干しや瓜がよく売れていたらしい。
彼はそこに乗っかるカタチで「丑の日にうなぎ」というコピーを書いた。
クリエイティブ・ジャンプをしたわけだ。

海外のマーケティング教科書で、「靴をはかないアフリカ原住民にどうやって靴を売るか」といったものがあるけども、それと同じことを、とっくの昔に実践してた人がいたってことだ。
僕が無料広告学校で教えていることも、つまりはこういうこと。
ところで鰻の値段が高騰していると報道されているけども、それは春までの話で、今は仕入れ値が下がって安くなっているらしい。