若者よ良い経験をせよ。

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最近ネットで、若者は大企業など行かずフリーとして生きるべしとか、行っても3年でやめるべしとか、そもそも大学に行く必要もないとか、そんな論調がよく目に入ってくる。
大反対だ。
そういうこと言う人は「経験」というものについてわかっていないと思う。
たとえば教本を読んだだけで車を上手に運転できる人がいるだろうか。とっさの判断でブレーキを踏んだりハンドルを操ったりできるのは、経験の積み重ねが正しい直感を作ってくれたからだ。ビジネスも同じ。うまくいく、うまくいかないの判断は、経験の積み重ねによる直感がモノを言う。
スティーブ・ジョブズを尊敬して彼のようになりたいと言う若者は多い。しかしそれは彼の経歴を知った上で言っているんだろうか。ジョブズは12歳の時にヒューレット・パッカードでアルバイトを始めた。それから数十年コンピュータと付き合った上で世界を変えることができた。ちなみにビル・ゲイツは高校生の時、まだ一般人が誰もパソコンというものに触れてない頃、パソコンの仕事を始めた。
何かしなきゃという意思や、ふとしたアイデアだけで天才になれるわけじゃない。天才の母体は経験なのだ。
昔から優れたCMを連発する企業がある。そういう企業には、ずっと宣伝をやり続けている人がいる。1年や2年でコロコロと人を異動させる企業のCMは安定しない。以前はおもしろかったのに最近どうしちゃったの?という企業と言えば、すぐにいくつか思い浮かぶだろうが、そういうところは長年携わってきた人を異動させている。組織の問題じゃなく、人の問題が大きい。正しい直感を持つ人材は促成栽培できるわけじゃない。
将来何者かになりたいのなら、若者が目指すべきは「良い経験のできる場所」だ。
それは大企業に限ってはいないと思う。しかし僕はやはり大企業ほど、立体的で幅広い経験ができると思っている。だから自分の広告学校の生徒には、できるだけ大きな企業への就職を勧めている。
フリーになってどんな経験ができるだろうか?何にも束縛されず、気楽に仲間と交流し、自分の身の丈に合った仕事だけをするのは気分のいいことかもしれない。でも鈴鹿で毎日先輩にくっついて走っている者と、近所を適当に流している者と、どっちがレースで勝つだろうか。
3年じゃ足りなすぎる。正しい直感を養うためには10年の経験でも足りないかもしれない。じっさい、成功する人はほとんどが30代半ば以降の独立らしい。ちなみに僕は36歳の時。僕に仕事を依頼する人は、僕の経験と直感に依頼していると言っていいと思う。経験のない若者に数十億のキャンペーンの命運を預けようと誰が思うだろうか。
コピーライター募集の最終選考に残した数名に、じっさいの仕事をアルバイトでやらせてみた。頭の使い方がコピー学校とはぜんぜん違いますと言っていた。学校で習うことも、本当の経験とは言えない。経験してもいないのに経験した気になると、大事故を起こす。あるいは一生レースに参加できないかもしれない。
若者よ「良い経験のできる場所」を目指せ。20代の間に、どれだけ良い経験ができるか。それが一生を決めると言っても言い過ぎじゃないと思うから。