新年の野心④ コピーライティングの新しい仕組みづくり

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今年からコピーライティングの新しい「仕組み」を作っていこうと思います。

「コピー」というものの役割がどんどん拡大している、というのが根っこの理由です。
僕は数年前に上梓した自著で、コピーはキャッチフレーズよりもタグラインに価値がある、などと書きました。
その原則は今でも変わっていないと思いますが、キャッチフレーズとタグラインを書くのがコピーライターの役割かというと、それではもう全く足りません。
一例を挙げれば、「検索ワード」は「ハッシュタグワード」に変わって来ていますね。
商品やサービスがSNS内でどのように検索されるか、拡散されるか、そういったコピー作りは旧来のレトリック型キャッチフレーズ作りとは全く頭の使い方が異なります。
Web広告(特にバナー)ではクラスター分けされたターゲットに精緻に刺さるコピーが必要ですが、これも属性でセグメントするのか、興味関心でセグメントするのか、そういったことでコピーの作り方は変わって来ます。
これまでの職人的やり方では対応できないのです。

また、広告主は押し付けを嫌がるようになって来ています。
コピーライターが、これが絶対にいい、といって1案、あるいは2、3案しか持っていかないと「もっと他にも見たい」と言われます。
「①」でも触れましたが、マーケティング担当者がアカウンタビリティ(説明責任)を果たすためには、全方位的に俯瞰した上で、これならコミュニケーション投資で失敗しないという強い確信を持たなければ進めないのです。
僕がコピーやネーミングをプレゼンするやり方は、まず切り口違いの50案ほどをテーブルの上に並べます。
それを広告主が見ていると、無意識に秘めていた思いが顕在化してきて、「自分たちが本当に伝えたかったのはこれだ」とわかってくるんですね。
そこからさらに拡げたり掘ったりをして、最終的な確信まで持っていきます。

ただそのやり方には馬力が必要です。
切り口違いの50案を並べるためには元となる数百案から絞り込まないといけません。
自分一人で360°の切り口を数百出すのはキャパ的に無理があるので、「クラウド」を活用します。
僕の「クラウド」とは、副業コピーライターたちです。
無料広告学校の元受講生に、副業でコピーを書きたいという人たちがいます。
本業としてコピーライターを目指す人もいますが、ほとんどは企画脳を育てることで自分の実務に役立つだろう、また人生の次のステージへの体力づくりになるだろう、と考える人たちです。
コピーライティングはクリエイティブ作業の中で最もストラテジー立案に隣接していますから。
そしてその中には、非常に「使える」人たちがいるんです。
案件によって適した人を数人集めてオリエンし、ガーッと書いてもらいます。
それを僕がディレクションし、また書き直し、50案に絞り込んでいきます。
活躍度合いによってきちんと報酬は払いますし、もちろん手柄を自分のものにしたりはしません。
採用されたらそれを書いた人の名前をコピーライターとしてクレジットします。
このやり方はクライアントさまに大好評で、これまで喜んでもらえなかったことがありません。
エージェンシーやプロダクションにもなかなかできないことで、言葉ひとつひとつのレベルも凌駕していると思います。
僕が商品開発に携わらせてもらったキリンノンアルコールビール「零ICHI」のネーミングは主婦のアイデアでした。

最近、そのやり方を聞きつけた外部クリエイティブディレクターやアートディレクターから彼らを貸し出してほしいという話が来るようになりました。
彼らのモチベーションは企画脳を鍛えることですから、他流試合をしてみたいという意欲も旺盛です。
もし誰かのコピーやネーミングが採用されたらクレジットに名前をしっかり入れる(手柄を横取りしない)ことを条件に開放することとしました。
これは一部のコピーライターたちから反発を招くかもしれません。
しかし自分はもう20年以上前から旧来のコピーライティングではやっていけない時代が来ると警鐘を鳴らしています。
自分のスタンスはあくまでクライアントファーストであり、クライアントのためにどういうやり方がベストかを常に考え続けてきました。
コピーライティング、ネーミング開発についてはこのCD&Crowd体制が現状ではベストと思っており、また、これは国が奨励する第2の人生設計に向けた副業・兼業の流れに完全に合致するものであります。
「量産の元が大事ならAI&CDでもいいんじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、AIは発注主の真意を理解して書き始める、ということをしません。
ただワードを並べ替える作業を高速でするだけ、と言って過言ではないでしょう。
アルゴリズムはほぼ同じでしょうから、AIコピーが普及すると表現の差別性が感じられなくなっていく、というパラドックスも待っているはずです。
まだまだA/Bテストぐらいにしか使えないんじゃないか(逆にA/Bテストになら非常に使える)と思っています。

ちなみにスペシャリストが一人で書く、というやり方じゃないとできないコピーライティングもあります。
企業の経営ビジョンを言葉化するとか、そういうものですね。
ミッション、ビジョン、バリュー、ステートメントといったいわば「CIセット」などは、経営者に寄り添わないととても書けないものなので、これは僕が一人でゼロスクラッチでライティングします。
ところでコピー、スローガン、ネーミング、自分は全てバイアウトします。
これらは発注主のものであり、自分はそれらを作るお手伝いをしているに過ぎないという認識なので、権利を一切持ちません。

ここらで広告コピーの本当の話をします。 (宣伝会議)>Amazon