新年の野心② クリエイティブ・コネクションという新たな役割

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昨年はいろんな、有り難いご縁に恵まれた年でした。

2019年1月現在、内閣府、日本テレビ、電通デジタル、サイバーエージェント、Jeki、AOI Pro.、そして多数の広告主さまと顧問/アドバイザー/ECD契約を結ばせていただいています。
各界のトッププレイヤーとお付き合いしていると、その課題感を得るだけでも自分にとって大きな知見となります。
メディアの記事ではない、ナマの実態を肌で感じられるのは非常に強いことだからです。
それも行政の大所高所からアウトプットの現場までを見られることは自分に立体的な視座を与えてくれ、そこからクライアントさまへ机上論ではない実効性の高いフィードバックをすることができます。
おそらくこのようなポジションにいる人間は日本で自分一人だけでしょう。
今年は、このポジションをさらに拡げます。

そして、広告主直でのご依頼内容、お付き合いの仕方も変化してきています。
自分はずっとクリエイティブディレクターをやって来て、クリエイティブは自ら請け負うのが当たり前でしたし、広告主やエージェンシーの方々もそう思っていたはずです。
でも、僕はあくまで広告主側にいて、エージェンシーがクリエイティブの企画制作をするのをサポートしてほしい、というご依頼が増えて来ているんです。
いろんな事情(契約関係とか権利関係とか)で、クリエイティブはこのエージェンシーに任せることが決まっている、といったケースってけっこうあるんですよね。
でも、なんだかうまくいかない。
そこに自分が入ると、瓦解寸前だったのがうまく回り始めるんです。
「うまくいかない」というのは、表面的には、マス・Web統合があります。
なかなかワンストップで任せられるエージェンシーがいない、また、広告主側のリテラシーが高くないと、エージェンシーも低めに合わせてくる。
こんなことでいいのか?と経営層から叱咤されるのだけど、現場がなかなか期待以上に答えられない。

デジタルは本当に日進月歩です。
たとえば昨年9月、TrueViewのデータをGDNで使うことができなくなり、TrueViewによるファネル設計が難しくなりました(おそらくそのことすら知らないデジタル系の人もまだいるはず)。
YouTubeの広告収入を減少させるようなことをなぜGoogleはやったのか?
この疑問に答えてくれる人はいませんでした。
やや話は逸れますが、日本ではWebCMは短いほどよく観られる、が常識です。
が、米国では一昨年ほど前から逆転現象が始まっているんです。
YouTubeコンテンツは長い方が見られる傾向にあり、Googleは長時間動画をリコメンドするアルゴリズムに変えたようです。
長い動画に広告を入れ込む方がGoogleとクリエイターはWin-Winの関係が築けるというわけです。
つまり、米国ではYouTubeのTV化がいよいよ始まっていて、日本はそれに振り回されている状況。
そこまで仮説立てられていて初めて、じゃあ日本ではどうするべきかという打ち手が考えられるわけですが、広告主もエージェンシーの担当者もほとんど追いついていない実状があります。
いろんな間違った知識や憶測が乱れ飛んでいる中で、成果の出にくいデジタル施策が氾濫しているので、僕のような運用発でコンテンツを評価できる人間が歓迎されるのです。

ただこれはけっこう根の深い話でして、広告主とエージェンシーのいろんな「ズレ」が年々大きくなっているように感じます。
いくら念を入れてオリエンをしても、経営層の真意を掴んでいないプレゼンがなされる、ということは往々にしてあります。
いろんな企業とお付き合いして感じるのは、最も勉強しているのは社長、専務、常務、といった代表取締役なんですよね。
できる人、わかってる人がデジタルマーケティングに長けた他社から横滑りでそこに入ってくると、部長レベルでもう付いていけなかったりします。
でも社長がいちいち現場に顔を出すのも限度がある。
僕はマス・Web統合のご依頼を受けて入ることが多いのですが、元エージェンシーの人間なのでエージェンシーのインサイトもわかります。
ああここを取り違えたのだな、ということで、経営層の言葉を翻訳してあげるとか、それでもダメなら具体的にこういう企画がいいんじゃない、と見せてあげたりとか。
そうすると非常にスムーズに流れ始めるんですね。
撮影や編集も極力立ち会います。
やはり末端まで真意が伝わっていないということはありますし、その場で口を出すことは必ずあります。
さらに言えば、エージェンシーからの見積もりを見てほしいとか、契約内容を見てほしいとか、そんなことを頼まれたりもします。
そうすると、「ここは内制でいいんじゃないですか?」「ここの美術は必要ないんじゃないですか?」とか言うだけで、何千万円と制作費が下がったりするんですよ。
ただそれだけのことで、僕の契約料の何倍もペイします。
何といいますか、自分がやっていることはコンサルティングというよりも、「コネクティング」じゃないかなーと感じること増えました。
単にコストカットを迫って泣かせるのではなく、エージェンシーのモチベーションも上がるようにベストな落としどころを見つけてあげる、そんな役割が期待されるようになって来ていて、経営層大喜びなんです。
今年はそういう仕事の仕方ももうちょっと増やしてみようかなと思っています。
何しろクライアントさまにメチャ喜ばれるものですから。

じつはその先には、「内制化サポート」というものが待ち受けている気がしています。
コミュニケーション施策全てをワンストップで引き受けられるエージェンシーが、現実的にはいないと言ってもいいぐらいの状況の中で、一部の広告主はコンテンツの企画制作でも、メディア運用体制でも、内制化に舵を切り始めています。
お正月の討論番組で、どなたかが「知の再武装」という言葉を発してました。
AIが人間の「知」の一部を引き受けるのだとすると、人間としてAIにはできない領域の知を見直し再強化しなければいけない、といった意です。
マーケティングの内制化に置き換えるならば、それは単にエージェンシーに払うマージンが浮くよね、とか、そういうセコい目的ではなく、デジタルテクノロジーが加速し、企業全体としてデジタルディスラプション(創造的破壊)からどう防衛するのか、あるいはディスラプター側になることはできるのか、そういった「再武装」を伴わなければ意義は浅いでしょう。
いずれそういったサポートもしていきたいと思っています。